リーガルニュース | 弁護士法人 Y&P法律事務所

TOPIX(東証株価指数)の見直しの第2段階

作成者: 細田 隆|Apr 21, 2025 8:09:34 AM

1.TOPIX(東証株価指数)の見直しの第1段階(2022年開始)
TOPIXは、東京証券取引所が算出する株価の指数ですが、日本株の市場平均を示すベンチマークとして、国内外で定着しています。
2022年4月に東京証券取引所の市場区分がプライム、スタンダード、グロースの3区分に再編されましたが、その際に、TOPIXについても見直しが行われました。
それまでのTOPIXは、東証第一部の銘柄すべてが対象銘柄でしたが、流通株式時価総額100億円以上という基準が設けられ、この基準を満たさない銘柄は、TOPIXの対象銘柄から除外されることとされました。
この除外は2年程度の移行期間が設けられて段階的に進められ、2025年1月末をもって移行期間が終了して除外が終了しました。
この結果、TOPIX対象銘柄は、約2170あったものが、約1700に絞られました。



2.東京証券取引所によるTOPIXの見直し第2段階の公表
東京証券取引所は、2024年10月、TOPIXの広範網羅性や投資対象としての機能性を高めるためとして、TOPIXの対象銘柄の基準について、見直しの第2段階を行う旨を公表しました。



3.第2段階の見直しの概要
第2段階の見直しの主な内容は、以下の通りです。 

(1)対象市場
現在の基準は、プライム市場上場を原則としていましたが、プライム、スタンダード、グロースいずれの市場でも基準を満たせば対象銘柄になることになりました。

(2)定期入替
現在は定期入替はありませんが、年1回、8月最終営業日の数値を基準に10月の最終営業日に定期入替が行われることになりました。

(3)選定基準
現在は流通株式時価総額100億円以上ですが、年間売買代金回転率について、対象銘柄継続については0.14以上(対象追加基準は0.2以上)、浮動株時価総額の累積比率について、対象銘柄継続については上位97%以内(対象追加基準は上位96%以内)になりました。

(4)非定期の追加
現在はプライム市場への新規上場・市場区分の変更ですが、プライム、スタンダード、グロースの各市場への新規上場銘柄は、浮動株時価総額が、同累積比率上位95%に含まれる銘柄の最低浮動時価総額を上回る銘柄を追加することとされました。



4.第2段階の見直しの実施時期
TOPIXの対象銘柄の新しい基準による初回の入替は、2026年10月から実施されます。
この第1回目の入替で除外された銘柄については、2028年7月まで約2年かけて段階的に除外が進められます。
そして、第2回目の入替は第1回目の入替の2年後の2028年10月に実施され、以後、毎年入替が実施されます。



5.影響
東京証券取引所の発表では、以上のような選定基準の変更の結果、現在約1700のTOPIX対象銘柄数が、約1200銘柄に減少すると試算しています。
約500の銘柄がTOPIXの対象外になるということです。
現在、パッシブ運用としてインデックス投資が盛んになり、TOPIXをベンチマークとする投資信託・ETFも多いのですが、TOPIXから除外される銘柄については、これらの投資信託・ETFの投資対象でなくなることが予想されることから、株価への影響が懸念されることになります。
新しい選定基準のなかでは、特に、これまで流通株式時価総額100億円以上とされていたものが、まず浮動株時価総額が基準に変更されました。
また、100億円といった絶対基準ではなくなり、市場の浮動株時価総額の上位97%以内といった相対基準になりました。
時価総額はもともと株価の影響が大きいのですが、新しいTOPIX対象基準について、対象銘柄に残留できるかどうかのボーダーラインに近い企業においては、基準クリアの管理は、これまで以上に難しいものになることが予想されます。

(注1)東京証券取引所によると、浮動株とは「各企業の上場株式のうち、実際に売買される可能性の高い株式(上場株式から固定株(有価証券報告書に起算の大株主上位10名の保有株、自己株式、政策保有株式等)を控除したもの)」とされています。

(注2)東京証券取引所の発表では、2024年8月の最終営業日を基準に試算したところでは、浮動株時価総額の累積比率上位97%の最小値は約230億円とされています。


                                                   以上

                                 弁護士法人Y&P法律事務所 弁護士 細田 隆