【概要】
カーボンニュートラルに関する取り組みに関連して、排出量取引制度の制度設計の前提として、経済産業省において、「GX実現に向けた排出量取引制度の検討に資する法的課題研究会」が開催されています。今回、当該研究会における議論の状況を、計7回にわたってリポートします。
【目次】
1.カーボンニュートラルを取り巻く現状
2.「GX実現に向けた排出量取引制度の検討に資する法的課題研究会」について
3.日程・検討内容
4.本稿の意義・今後の方向性
1.カーボンニュートラルを取り巻く現状
世界的に地球温暖化対策が課題とされているなかで、日本においても、2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標達成のために様々な取り組みがスタートしています。特に、経済産業省が主導して発足したGXリーグは、発足後約2年が経過し、民間レベルでのカーボンニュートラルに対する取り組みは徐々に広がってきているところです。
日本政府は、経済産業省を中心に、GX推進の検討を加速させています。その一環として、排出量取引制度の義務化を見据えた制度設計を行っていますが、その前提として、「GX実現に向けた排出量取引制度の検討に資する法的課題研究会」を開催し、排出量取引制度における法体系上の整理を行っています。
また、排出量取引制度の具体的な制度設計については、内閣官房の下、「GX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループ」が立ち上げられ、議論が開始されました。
排出量取引制度の義務化を見据え、制度の前提となる法的議論を理解しておくことは、制度の外観や大枠を理解し、日本における制度設計の方向性を掴んでおくために非常に有意義であると思われます。
2.「GX実現に向けた排出量取引制度の検討に資する法的課題研究会」について
経済産業省が設置した「GX実現に向けた排出量取引制度の検討に資する法的課題研究会」の趣旨・目的とされているのは次のとおりです。
本研究会は、日本を代表する各分野の法学者を委員として招き、海外の排出量取引制度に関する法的議論との比較検討を行っています。最終的には、排出量取引制度の法的課題と考え方に関する報告書を取りまとめ、その内容を前提に、別途排出量取引に関する詳細な制度設計がなされる見込みです。日本政府は、2026年度における制度の本格稼働を目指し、検討のステップを着実に踏んでいるものと考えられます。
3.日程・検討内容
本研究会は、本年5月以降、月1回のペースで少なくとも計5回以上開催される予定で、次の日程、内容に従って排出量取引制度に関する法的論点について議論・整理されています。
・5月17日・・・排出量取引制度に係る憲法上の論点整理
・6月5日・・・排出量取引制度に係る行政法上の論点整理
・7月22日・・・排出枠等に係る私法上の論点整理
・8月21日・・・排出枠等の取引に係る法的な在り方に関する論点整理
・10月18日(予定)・・・取りまとめ報告書案に関する議論
なお、本研究会はyoutubeで同時配信され、過去の研究会についてもアーカイブで視聴可能です。資料・議事録については経済産業省のホームページにアップロードされています。(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/gx_implementation/index.html)
4.本稿の意義・今後の方向性
当事務所では、今後、本研究会において議論された内容を各回に分けて整理し、わかりやすい形にしてリーガルニュースとして順次公開する予定です。
GXに注目されている企業担当者の方にとってみれば、排出量取引制度がどのような制度になるかについては、ご自身の業務にも直結しますから、非常に関心が高いのではないかと思います。本研究会での議論内容を正確に理解することで、日本における制度設計の方向性を理解し、将来的に発生しうる、法的な問題点を事前に整理することが可能になると思われます。
カーボンニュートラル検討プロジェクトチーム 弁護士 荒籾 航輔